プロジェクト
中:JR九州 鉄道事業本部営業部営業課(宣伝) 浦佑希さま
左:電通九州 アート・ディレクター/CMプランナー 永田泰佑
右:電通九州 ビジネスプロデュース局 宮川弘史
◆ 課題 | 沿線の皆様と心をひとつにする、新幹線開業プロモーション |
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◆ 施策 | 地元住民で1日限りの楽団を結成、お祝いイベントをプロデュース |
◆ 効果 | 参加者数4,000名超。「一生の想い出」との声多数。 |
(プロジェクト特設サイトはこちら)
海からやってくる新幹線
2011年、東日本大震災後の日本人の心を励まし、大きな感動をもたらした「祝!九州」プロモーション。その後に続く「流れ星新幹線」も記憶に新しい中、JR九州と電通九州が再びタッグを組んだのが、今回の企画。しかし、状況は過去2回と大きく異なります。
浦さま
「祝!九州プロモーションは、博多から鹿児島までの全線開業によって、九州が一つになるというメッセージを込めたものでした。でも今回は佐賀県、長崎県と、関わる地域も限定的。そんな条件の元、過去のプロモーションのような感動をどう引き起こすか、難しい課題でした」
そんな中で、パートナーに電通九州を選んだ理由は?
「1年前の流れ星新幹線プロモーションでチームがすでに成立していましたし、動画を作ることがゴールだったので、電通九州さん一択でしたね」
企画会議は、約1年前からスタート。2021年末にJR九州側から「地元の人に愛される新幹線に」とのキーワードが出され、2週間に一度、4月以降は毎週、企画会議が行われました。参加メンバーは、JR九州側から宣伝担当、電通九州側からも営業やクリエイティブ、プランナーなどフルチーム。
電通九州 ビジネスプロデュース局 宮川弘史
武雄温泉〜長崎間は66kmで、小倉〜博多間と同じぐらい。その間に3駅あり、ほとんどがトンネル区間なので、『祝!九州』の時のような沿線からの応援はできません。通常の業務の合間にも、常に企画のタネを探し回る日が続きました。
永田
「ネットでたまたま、新幹線の陸揚げが行われることを知って、すぐ長崎の川棚港まで車を走らせました。きれいな海から新幹線が現れる画がとても衝撃的で、駅と港を合わせた企画がいいと考えるようになりました」
電通九州 アート・ディレクター/CMプランナー 永田泰佑
かもめ楽団結成! しかし当日までに間に合うのか……
浦さま
「ネーミングもキャッチーですし、賑わいを作り出すイメージも湧いてきて、これならいけると思えました」
宮川
「イベントが1日限りの貴重な機会だと感じてもらえれば、沿線の人たちも集まってくれるはず。それに、老若男女誰もが知っていて、口ずさめる歌として、HAPPY BIRTHDAYはぴったりでした」
「それぞれの駅で個性を出すために、曲のアレンジを全部変えたんです。新大村はマーチング、諫早はジャズ、長崎はオーケストラというように。でも凝ったアレンジは演奏を難しくしますし、こちらも音楽に詳しいわけではないので、アドバイスもできない。しまいにはかもめキャプテン(楽団のリーダー)から怒られたりもして(苦笑)」
「どのくらいの完成度なのか正直不安な部分もありましたが、見学に行ってその懸念は吹き飛びました。使い込まれた楽器を持ったおじさまたちが、諫早の田んぼの真ん中の公民館にぞろぞろと集まってきて、いざ演奏が始まったらものすごいクオリティのジャズで。地元にこんなすごい人たちがいたことにも感動しました」
仕込みは一切なし。参加者の表情が物語る
浦さま
「イベントの1ヶ月後には実際の開業と運行開始も控えていて、開業のための検査も同時に進行していました。ここで何かあっては、開業そのものに影響する。かつてない緊張を感じていましたね」
そして、電通九州チームにも、大きなプレッシャーがかかっていました。当日のイベント成功は当たり前で、それをまとめ上げた集大成的映像作品を作るのがこのプロジェクトの目的。素材は当日の様子だけで構成するため、撮り逃しは厳禁です。動員したカメラは、ムービー用に50台、スチール用に8台。さらに、関わったスタッフ全員が手持ちのスマホでもカメラを回し、参加者の自然な表情を捉えるために、万全の体制で臨みました。
結果は、映像をご覧いただければわかるように、大成功。参加自体が楽しかったと、一般参加者の多くが語り、中には一生の思い出になったとも。
永田
「当日は、武雄温泉駅のイベントでアート・ディレクターとしてスチールの指揮をとった後に、そのまま終点の長崎まで行く予定でした。でも、地元の諫早の様子が途中でどうしても気になってきてしまって、諫早まで行く浦さんの車にちゃっかり同乗させてもらいました」
宮川
「自主的に考えて行動し、ベストを尽くす。スタッフ全員が自然とそう動けていたのが、素晴らしかったですね」
「人は楽しげなところに行きたくなるので、このイベントの様子を見て、西九州に来てみたいと思う人が増えるといいなと思いました」
ムービーに残された、幸せな日の記録
永田
「最初の仮編集を見ていただいた時に、JR九州さん側から細かい修正がびっしりと来たんです。普通なら、制作チームにとっては苦しい局面ですが、今回は良いものを作るために妥協しない姿勢を感じて、むしろチームの士気がさらに上がりました」
宮川
「今回は音楽と現場の音が組み合わさった映像です。歌をよく聞かせようとすると臨場感がなくなり、環境音を前に出しすぎると歌が聞こえにくくなる。このバランスが、最大の難関でした」
浦さま
「歌と映像がぴったり合うと、まるでライブ映像を見ているような感覚になるんですよ。細かい調整を繰り返して、ピタッと決まった時に、当日の感動が蘇ってきましたね」
「やはり電通九州さんしかできなかったと思うのは、フルメンバーで挑んでいただける体制と、選手層の厚さです。イベントも動画もポスターも、やれないことはひとつもなく、イメージを超えたものができあがる“いいサプライズ”しかありませんでした。ギリギリまで細かいことを言い続けてしまったのも、より良くなるとわかっていたからです。自分が関われた最大級のプロジェクトを、電通九州さんとみっちり一緒に取り組めて、本当に良かったと思っています」
プロジェクトの集大成であるムービーは、ぜひこちらのYouTubeからご確認ください。
西九州新幹線開業プロモーションの歴史に刻んだ新たな1ページを、感じていただければと思います。